虫歯が深くても神経を抜かない!?
虫歯が深いと「神経を取らないといけません」と言われ、不安に感じたことはありませんか?
実は、ある研究では「奥歯の神経を取ると、その歯の抜歯リスクは7.4倍に高まる」と報告されています。できることなら神経は残した方が、歯は長持ちするのです。
歯の中の大切な神経「歯髄」
歯の中には「歯髄(しずい)」と呼ばれる組織があります。歯髄は神経や血管が集まった部分で、歯を健康に保つために欠かせません。
歯は外側から次のような3層構造になっています。
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エナメル質:歯の表面を覆う体の中で最も硬い部分
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象牙質:エナメル質の内側にあり、やや柔らかく虫歯が進みやすい部分
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歯髄(神経・血管):歯の中心にあり、栄養や水分を届け、温度や痛みを感じ取るセンサーの役割
この「歯髄」があるからこそ、歯は生きた組織として長く健康を保てるのです。
これまでの治療と新しい選択肢
従来は虫歯が深くなると「強い痛みが出る前に神経を取る」治療が行われることが多くありました。神経を取ると痛みはなくなりますが、歯は栄養を失ってもろくなり、将来的に割れやすくなってしまいます。
そこで近年広がっているのが 「歯髄温存療法(しずいおんぞんりょうほう)」 です。
これは、虫歯の部分を丁寧に取り除いたあとに、MTAセメント(密閉性に優れた特別な材料) で神経を保護する治療です。神経が自然に回復する力を助けることで、歯を生きたまま守ることができます。
歯髄温存療法のメリット
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歯の寿命を延ばせる
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歯がしっかりと水分や栄養を保ち、強度も維持できる
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将来的に割れにくく、抜歯のリスクを減らせる
ただし、すべての歯で適用できるわけではありません。虫歯が大きく進み、歯の根の先まで炎症が広がっている場合などは、神経を温存できないこともあります。そのため 早めの受診と定期的な経過観察 がとても大切です。
当院での取り組み
当院では歯髄温存療法を行う際に、次のような取り組みを行っています。
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マイクロスコープ(歯科用顕微鏡) を使用し、肉眼では見えない細部まで確認
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ラバーダム というゴムのシートで治療部位を覆い、清潔な環境を確保
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治療後は、再度感染しないように精密な詰め物で修復
これらを徹底することで、治療の成功率を高めています。
「できるだけ歯を残したい」「神経を抜きたくない」という思いから、遠方からご来院くださる方もいらっしゃいます。
歯髄温存療法は、歯を守るための新しい選択肢です。気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。